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2009年7月12日日曜日

共同声明09年7月現在

私たちは、渋谷区から2009年6月18日に発表された「宮下ナイキ公園」計画による公園の改変工事に対し、主に2つの理由から工事の凍結・計画の撤回を求めます。  第1の理由は、この改変計画が宮下公園の公共財としての価値を大きく損なうものであることです。第2の理由はこの改変計画が、民主主義社会としては極めて不適切なプロセスで準備され決定されたことです。 第1の理由;宮下公園の公共的な価値を奪う計画内容 (1)ナイキのせいで「無い木」公園に?  重要なことが、6月渋谷区議会における計画発表、そしてマスコミの報道ではほとんど伝えられていません。それは、今ある樹木が伐られ、公園の中身が改変されることです。  今回の計画でスポーツ施設(スケートボード・ロッククライミング)が建設される予定の空間には現在何本もの大きな(ケヤキなどの)樹木があります。この大きな樹木が、渋谷駅周辺では希少ともいえる豊かな緑地空間を形成しています。  今回の計画では、ナイキ・ジャパンがスポーツ施設を「寄贈」するかたちになっています。しかし現在茂っている大きな木々を伐ってまで、スポーツ施設の「寄贈」を受ける必要があるのでしょうか。緑地を消滅させスポーツ公園化することが公共の価値に沿うことでしょうか。  今回の計画は、都市の緑地空間保全という近年の傾向に逆行するものです。 (2)「消費しなくてもいい場所」が奪われる  また現在の宮下公園は、「消費しなくていい場所」、無料で休息・休憩できる場所です。渋谷のような極度に発達した消費都市において、このような空間は貴重なものです。また格差社会化が進む現在の日本社会では、貧しい者がお金を使わずに過ごせる空間がより必要となっています。今回の計画は、利用者の幅を著しく狭め、公共的価値を損なうものです。 (3)セイフティ・ネットの破壊  さらに現在の経済危機のもと、居住空間を失った「ハウジングプア」が大量に生み出されており、そのなかで宮下公園は「セイフティ・ネット」の機能を果たしています。現在も約30人が居住し、今後もこのような空間がより必要となるでしょう。  行政が有効なハウジングプア対策を講じていない現状で、このようなセイフティ・ネットとしての公園の機能を奪うことは正しい判断とは思えません。渋谷区は区役所地下の野宿空間をも奪おうとしていますが、これもハウジングプア問題への無理解を示すものです。 第2の理由;民主主義的な手続きを無視した不適切なプロセス  今回の計画は、単なる命名権契約の範囲を大きく逸脱し、公園の中身の改変に踏み込んだものです。にもかかわらず、この1年間、渋谷区は情報の公開を拒み、基本プランの提示も行わず、パブリックコメントの募集もなく、都市計画審議会で議論されることもなく、驚くことに渋谷区議会での議決すら経ずに計画を実行に移そうとしています。  加えて、大手スポーツメーカーが数社あるなかで何故ナイキ・ジャパン社なのでしょうか。しかるべき公募や競争入札が行われた形跡がありません。最初からナイキに決められていたとしか考えられないのです。  なぜ、ここまで民主主義社会としての最低限のルールを無視するのでしょうか。公共財は区長の私物ではないはずです。  これまでの非民主主義的な決定プロセスをいったん白紙に戻し、公共的な議論をゼロからやり直さない限り、この計画に正当性があるとは考えられません。

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