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2025年6月25日水曜日

野宿者の生活は廃棄物でも支障物でもない 東京都建設局第三建設事務所による野宿者排除に抗議する

 警告書を貼られ追い込まれ、逃げ場もふさがれる

新宿のある歩道の脇に、20〜30人がダンボールハウスなどを寝床にして暮らしていた。6月4日、東京都建設局第三建設事務所(以下、三建)管理課の職員が警察官、福祉の職員を引き連れてやってきた。

「工事の支障となるので、至急撤去してください。6月17日までに撤去されない場合は支障物として撤去します」という警告書をそれぞれの荷物に貼り、居合わせた野宿者に工事は来年2月まで行われると告げた。「徹底的にやってやる」と恫喝された人もいる。



「二週間で出て行けって、いったいどこへ行けばいいのか」。これまでイベントや道路清掃が実施されるたびに、数日間だけ移動して協力してきたが、今回は数か月にわたる工事であり、戻ってこられる保証もない。さらに数日後、200メートルほど離れた、屋根がある歩道に、ずらりと巨大なブロックが現れた。三建管理課によって設置されたそれらの目的は、あきらかに荷物の避難を妨害するためだった。



代わりの寝場所や荷物の移動先が見つからないまま、撤去が迫ってくる日々、不安とストレスからか倒れてしまった人もいる。



荷物を少しずらせば工事は可能


はたして、本当に全員が一斉に立ち退かなければならない工事なのか?

6月12日、私たちは警告書を貼られた人たちと一緒に、工事を監督する三建・新宿工区の事務所で質問した。すると、工事は工程ごとに範囲を区切って行われることが分かった。そのため、作業帯に合わせて少しずつ荷物や寝床を移動させれば工事ができることを新宿工区も認めた。しかし、新宿工区は「撤去については、管理課が決める」という。私たちは三建・管理課に出向き、金沢課長代理や佐藤課長代理に、撤去警告を取り消すよう申し入れた。管理課は新宿工区に確認して検討すると答えた。

ところが、撤去期限の6月17日、三建・管理課は「工事全域、所有物であろうと工事の支障物として撤去する」と言い張った。合理な撤去を強硬に推し進める三建は、工事を名目にして野宿者を一掃しようとしていると言われても否定できないだろう。




三建は人権侵害を繰り返してきた


三建は、これまでもことあるごとに野宿者に威圧的な態度を取り、所有物を撤去し、保管もせずに廃棄してきた。所有物を撤去された人が問い合わせたところ「あんたの荷物は持って行った。粉砕処理した」と言われたこともある(注)。そのような横暴なやり方を経験してきたため、多くの野宿者は必要最低限の荷物だけで移動せざるを得なかった。恫喝して従わせることは、ハラスメントに他ならない。野宿者に対する人権侵害であり、直ちに止めるよう三建に強く求める。


注:2019年、弁護士が三建に対して、所有者であることが容易に認識しうる状態であったにもかかわらず、相当な期間、保管することもせず、即日処分したことは荷物の所有権を侵害する違法であると、警告している。



撤去当日


6月18日14時頃、三建など東京都建設局職員約10人、警察官7名、産廃業者の作業員、そして、東京都福祉局や新宿福祉事務所の職員、また、新宿区の支援事業を受託している団体のスタッフたちが集まり、撤去作業を始めた。

こんな撤去はおかしい! 所有者に確認もなく撤去する法的な根拠は何か?! と抗議の声が上がる。三建・管理課の指示のもと、歩道にある物を作業員たちがトラックにぽんぽんと投げ入れていった。これらの多くは移動できる場所がないため、仕方なく置いていった物だ。生活があったところは空っぽになっていき、撤去の後を追うように作業員がカラーコーンとトラバーを次々と並べていった。



 

三建・管理課の島川課長は「人権よりも道路は支障なくしなければならない」、金沢課長代理は「道路以外に行ってください」(6月16日)と発言。人権意識の欠如を露呈した。また、撤去作業を眺めている福祉の職員は「建設局に呼ばれたから来た」と言っていた。福祉が同行しているという免罪符のため駆り出されていることに無自覚であり、野宿者排除への協力は、福祉を冒涜するものだと言わざるを得ない。



撤去への抵抗


野宿者のひとりは荷物とともに自分も動かないと、三建の職員たちを寝場所で迎えうった。そして、本人の強い拒否と抗議によって、三建はほとんど手が出せなかった。また、一部の野宿の人たちが置いていったダンボールの寝床に対しても「 6月24日までに撤去されない場合は支障物として撤去します」という新たな警告を貼って通りすぎた。

不当な追い出しに対して、はっきりと抗議し抵抗した野宿者と、それを応援する人たちによって、寝床を守り抜いたことは大きい。この一つの抵抗は、たくさんの仲間を励まし、それぞれの生活を取り戻すことに繋がるだろう。このようにして、野宿者たちは同じ場所に住む仲間たちの存在によってお互いを支えてきたのだ。



またここに戻ってくるだろう

この歩道は長年、多くの野宿者が命を繋いできた大切な場所だ。さらにまた、福祉など行政サービスからこぼれ落ちる人たちに対して、自律的な支援や助け合いが行われている場でもある。さまざまな人が共に生きていくことを実践しているのだ。ここに集まる人たちによって築き上げられた生活を破壊してはならない。

新宿のあちこちで大規模な再開発工事が進められ、野宿者は追い出され、生きる場を狭められている。しかし、わたしたち野宿者は、支障物でも廃棄物でもない。追い出されても私たちは消えることはない。高層ビルが立ち並ぶ街のなかに、野宿者たちは生きている。


わたしたちは、道路工事を名目とする三建の野宿者排除に抗議し、三建がさらなる人権侵害を重ねることがないよう強く要請する。


2025年6月24日

ねる会議