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2026年8月1日土曜日

『ルポ 路上メシ』 双葉社謝罪文に対する、ねる会議の見解

2025年11月、國友公司著『ルポ路上メシ』が双葉社から出版されました。わたしたちは、同書が野宿者に対する重大な差別・人権侵害であると考え、2026年5月1日、抗議声明を公表しました。抗議声明に対して、5月10日までに、47団体、804名の方からの賛同が集まりました。

わたしたちは、5月13日に出版元である双葉社に抗議を申し入れ、同日および6月9日に話し合いをおこないました。話し合いでは、抗議の内容について詳しく説明し、炊き出し利用者や支援団体から寄せられた抗議のメッセージを伝え、同書の販売を続けてほしくないこと、回収をしてほしいことを訴えました。その後も、双葉社とのあいだでメールのやりとりをおこないました。

一連のやりとりを受けて双葉社は、7月16日に下記の二文書(以下あわせて、謝罪文)を公表し、また同書を回収すること、電子書籍、オーディオブックを配信停止することを明らかにしました。

謝罪文で双葉社は、わたしたちが抗議声明で指摘した4つの問題点について、おおむね認めました。また、図書館に対しても回収要請を行うことを約束し、再発防止のための体制をつくることも表明しました。出版社がこのように対応したことは、今後のためにも意義のあることだととらえています。

しかしながら、わたしたちが抗議声明および2回の話し合いにおいて訴えた点のいくつかを謝罪文は認めませんでした。

以下では、謝罪文が何を認めていて、どの点で不十分なのか、わたしたちの見解を述べます。

差別・人権侵害は表現の問題にとどまらない

謝罪文は、同書の「表現が差別的」であること、同書が差別を「強化・助長する危険」があることは認めました。また、一般論として「差別は許されない」ともしました。しかしながら、同書は特定の表現や描写のみならず、取材・執筆・出版のそれぞれの段階で、野宿者・生活困窮者を差別しているとわたしたちは考えています。このことは、双葉社との話し合いの中でくりかえし伝えてきたことです。残念ながら、双葉社はこの点について正面から認めるにいたりませんでした。

抗議声明でも述べたとおり、著者は同書のために、立場と目的を偽って炊き出し利用者に近づき、その親切心を利用して情報を集め、居場所などのプライベートな情報も含めて、娯楽的な読み物として執筆しました。著者、編集者は、記事を書いたことも、出版することも、取材対象者に知らせませんでした。これは、野宿者・生活困窮者に対する人権侵害です。そして、通常の取材対象者に対しては行わない、するべきではないことを、野宿者・生活困窮者に対してならやってもよいと考え、行うのは、差別にほかなりません。

わたしたちとの話し合いを経て、謝罪文が「本書において、こうした取材方法を取るべきではありませんでした」と認めるに至ったことは重要ですが、本質的なところで認識不足があると思います。

また、謝罪文は、居場所、寝場所をさらしたことについて、「人権に関する問題」とあいまいに触れているものの、同書の取材と出版において野宿者・生活困窮者の人権を侵害したことを明言しませんでした。

「無自覚」を主張することの問題

謝罪文は、同書の諸問題の本質として、國友氏、双葉社の「無自覚な偏見や無自覚な特権性」がある、としています。「無自覚な偏見」とは、偏見があったことを認めつつも、それが意図的ではなかったかのようにその責任をあいまいにする表現です。しかし、國友氏は『ルポ西成』(2018、彩図社)や『ルポ路上生活』(2021、KADOKAWA)でも同様に、特定の地域、属性の人々を侮蔑的な視点から見下し、揶揄しています。これらのことは、そのような場所や人々をことさらに危ないもの・奇異なものとして描くことによって読者の関心を引き、また、それらから著者が距離を置くことによって読者に高みの見物をさせるという執筆手法にも由来しています。國友氏が、みずからの手法に無自覚だったとは考えがたく、双葉社もまた問題性を客観的に認識しうる立場にありました。

取材対象者の気持ちの問題にせばめないでほしい

謝罪文は、個人の特定、炊き出しの場に不安などを与えたこと、寝場所の特定、支援活動の妨害とならんで、「心を傷つけてしまった」こと、「精神的苦痛を与えた」ことについて、くりかえし反省を表明し、謝罪しています。もちろん、悔しい思いをしたり、怒っている人がいることは事実です。しかしながら私たちが問うているのは、國友氏と双葉社が取材・執筆・出版において、差別と人権侵害をおこなったことです。

謝罪文は、「野宿者・生活困窮者の(略)困難に対して寄り添い、心の目線を合わせる姿勢が欠けてい」たと述べていますが、わたしたちは、それ以前のこととして、野宿者・生活困窮者に対してなら人として当然の権利をふみにじっても構わない、とする差別をやめてほしいと考えています。

さいごに

今回、『ルポ路上メシ』の問題性についてわたしたちは声をあげ、一定の成果と社会的合意が得られました。

ただし、野宿者・生活困窮者の日常に立場を偽って入り込み、助け合いの関係や支援を取材のために利用し、私的な会話や行為を揶揄・冷笑するよう書かれたルポが、本として出版され広められたことの影響は、謝罪、回収という対応が取られた現状でも残っています。炊き出しなどの場における疑心暗鬼の状況や、尊厳を軽んじられた影響は消えていません。著者、出版社の社会的責任は重いです。

同書に限らず、今後も、こうした著作物や表現物などが許されてはならないということを、わたしたちは示していく必要があると考えています。