2025年に双葉社から、國友公司著『ルポ 路上メシ』が出版されました。取材であることをかくして各地の炊き出しなどを訪れ、野宿者、生活困窮者から聞き出したプライベート情報などを暴露する内容の本です。私たちはこの本が、野宿者、生活困窮者への人権侵害であると考え、双葉社、國友氏に対して抗議します。抗議の内容については、本ブログ記事後半の抗議声明をお読みください。
抗議声明は、5月10日(日)までにご賛同いただいた団体、個人の方々の一覧とあわせて、双葉社に直接、提出する予定です。下記のフォームより、ぜひご賛同をお願いいたします。なお賛同者のお名前は、提出文書および本ブログ記事の両方に掲載、提出文書のみに掲載(他では非公開)、非公開のいずれかを選択できるようにしています。
賛同フォーム:
以下抗議声明です。
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株式会社双葉社 代表取締役社長 梓沢雅治 様
株式会社双葉社 島野浩二 様
株式会社双葉社 週刊大衆編集部 御中
國友公司 様
ねる会議
賛同団体、個人: 文末に記載
■ 『ルポ 路上メシ』への抗議声明
2025年11月22日、双葉社より、國友公司著『ルポ 路上メシ』(発行者 島野浩二)が出版されました。これは、『週刊大衆』(2024年5月25日号〜2025年9月22日、29日号)に連載されたものです。同書は、取材の手法と、内容の両面において、野宿者、生活困窮者を侮辱し、危険にさらすものであり、また事実関係においても多くの誤りを含みます。
私たち、野宿当事者および支援者からなる団体であるねる会議は、同書の出版について、出版元である双葉社、ならびに著者である國友公司氏に対して抗議します。
■ 問題点1: 対象者の同意なき取材と公開
國友氏は同書(『ルポ 路上メシ』、以下同様)において、前著『ルポ 路上生活』(2021, KADOKAWA)と同様、取材という目的を隠し、立場を偽って野宿者、生活困窮者に近づき、情報を集めています。これは、同書の記載(p. 118, p. 211, p. 291)でも示唆されています。また、國友氏に接触され、同書でプライベート情報を暴露された人たちへの、私たちの聞き取りでも裏づけられています。たとえばある人は、國友氏が、自身が生活保護を受けている、と虚偽の説明をしたのを聞いています。
このようにして近づいた人たちの親切心を利用して、話を聞き出すような取材手法は悪質です。炊き出しなどでの情報交換や助け合いは、野宿者、生活困窮者が、不安定な状況で生活するために不可欠なものです。同書のような取材は、そのネットワークをこわすことにつながります。
同書には、野宿にいたる経緯、生活保護利用の状況、病歴、職歴など多岐にわたるプライベート情報が記載されています。寝場所、風貌、年齢などから人物が特定されうる描写もあります。その一方で、誤った内容も含んでいます。このようなことを本人の同意なく書きたて、出版するのは、重大な人権侵害です。
なお、國友氏は自分の情報収集を「潜入取材」(p. 303)と位置づけようとしています。しかし、同書の対象は、野宿者、生活困窮者など、社会的に力が弱いとされる人たちです。権力の内部に入り込んで内実を明らかにするという、一般的な意味での潜入取材にはあてはまりません。
■ 問題点2: 野宿者の寝場所を危険にさらす記述
同書は、野宿者の現在の寝場所を詳細に記しています。その中には、人目につかないように就寝している場所すらあります。寝場所を公開することで、野宿者への暴力や放火などの「襲撃」をまねくおそれがあります。本書の記述は野宿者の生活と生命を脅かす、著しく配慮に欠けたものです。
■ 問題点3: 支援すること/受けることをおびやかす行為
國友氏は、知り合った人から話を聞き出すだけでなく、支援団体による野宿者の訪問活動を尾行し、それによって特定した寝場所を具体的に書いています(p. 129, p. 134, pp. 150-151)。寝場所を公開することの危険性は前節で述べたとおりです。
居場所、寝場所を訪問する活動は、個人の生活領域に入りこむため、慎重に行う必要があるデリケートなものです。國友氏の行動、および同書の記述は、こうした支援活動に求められる信頼性、安全性を損ない、また、支援を受けることを危険にさらしています。
また、同書は炊き出しの日時や場所などの詳細を、私たちが確認した限りでも複数の活動について、主催者の同意なく書いています。これは、野宿者、生活困窮者の食事の場所を好奇の目にさらし、安心できない場にするものです。くわえて主催団体にとっても、周辺住民との関係や、活動のキャパシティなど、微妙なバランスの中で成立している活動の継続を難しくするものです。
■ 問題点4: 野宿者、生活困窮者に対する侮辱
同書は全体として、野宿者、生活困窮者を奇異な観察対象として取り上げて、揶揄、冷笑する視点から書かれています。その姿勢は、たとえば、次のような表現に示されています。
「長年の習慣で体の調整機能すら進化してしまっているのかもしれない。もはや爬虫類である」(p. 22)
(「人に何かをしてもらったらお返しをしないと気が済まない」という人について)「捕まえたネズミでも渡されたりしても困る」(p. 98)
「聞いているだけで頭が悪くなりそう」(p. 333)
國友氏の接触を受けた何人もの人が、このような記述にふれてショックを受けています。また、異議申し立てをすることが困難な人を揶揄の対象にすることは卑劣であり、それを娯楽的な読み物として商業出版し、利益を得ることは搾取的です。
このような侮蔑的な視線と描写に満ちた本書の出版は、本の中に書かれている人たちだけでなく、野宿者、生活困窮者一般に対する差別を助長するものであり、断じて許せません。
私たちは、上記の問題点を含む同書を出版した双葉社と國友公司氏に強く抗議します。
■ 賛同団体、個人(5月6日午後2時時点)
団体(五十音順):
• ActNow‼︎Kagawa
• アジロン編集部
• ATTAC Japan(首都圏)
• 一般社団法人つくろい東京ファンド
• 一般社団法人婦人民主クラブ
• いんくるーしぶ杉並
• エトセトラブックス
• NPO法人木パト(相模原市)
• 釜ヶ崎公民権運動
• 釜ヶ崎センター開放行動
• かりん燈関東
• 月曜夜回りの会
• 寿日雇労働者組合
• 小山さんノートワークショップ
• ささしま共生会
• JCA-NET
• スープの会
• 住まいの貧困に取り組むネットワーク
• 特定非営利活動法人TENOHASI
• 反差別相模原市民ネットワーク
• 日本基督教団神奈川教区寿地区活動委員会
• 野宿者訪問もろもろの会
• 反貧困ネットワーク
• 「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会
• 広島瀬戸内新聞
• 府中萬歩記
• 平和を考え行動する会
• まんなかタイムス
• ミニミニ(聖公会野宿者支援活動・渋谷)
• 夜まわり三鷹
以上30団体。他に非公開2団体を加え、合計32団体。
個人(五十音順):
相澤春、青木裕介、青山薫、あかはねさやか、朝吹エマ、安次嶺沙友希、東琢磨、麻生 歩、安部竜平、安藤志保、生田まんじ、池田慈雨、池田龍斗、石井ゆりこ、石岡真由海、石田述子、石原久嗣、石原まりな、石原みき子、石丸敏子、磯貝真、礒部史也、市川喜一郎、市川幸平、市川平、市場恵子、いちむらみさこ(ノラ)、伊藤書佳、稲葉剛(住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人)、稲葉奈々子(上智大学)、井野博満(東京大学名誉教授)、猪野美佐緒(非正規滞在外国人支援)、今津啓志、植松恵美、うさやま、牛田純一(反貧困ささえあい神奈川副代表)、宇田川絵里、江口賢、遠藤純一郎、大木清子、大塚たけしさ、大野和興(農業記者.日刊ベリタ編集委員)、大野玲、大橋奈穂子(府中萬歩記)、大村智(航思社)、大山千恵子、岡山文人(翻訳家)、小川 幸子、小川てつオ(野宿者)、小川奈穂子、奥山たえこ(杉並区議会議員)、尾崎ツトム、小畑 隆昭、加賀谷 美里、柿本志信、影山 寛恵、樫尾則美、片岡栄子、加藤 隆、加藤寿子(ふぇみん婦人民主クラブ)、金子新吾、鎌田美保、烏山健志、川島 美由紀、河原省吾、北 明美、北場 逸人 (社会民主党奈良県連合宇陀支部)、木村靖司、木村敬子、木村理恵、京極紀子、金 栄、國井佳美、熊本理抄、栗田隆子(文筆家)、栗原志満、栗山 次郎、黒岩大助、黒田崇宏、桑原康明、小池陽慈、小岩勉、河野 開司(こうの かいじ)、古かく 祐蔵、小金菜穂子、木口優、木暮茂夫、小島千佳、ゴトウ、小橋、小林智香子、小林瞳(平和の種をまく会)、近藤登志一、三枝明夫(アジロン編集部)、坂内孝雄、坂上祥子、坂庭国晴(住まい連代表幹事)、崎山 政毅 (立命館大学教授)、桜井大子、櫻井莉菜、櫻田和也(大阪公立大学人権問題研究センター)、笹川榮子、笹川孝徳、佐々木玲子、佐藤泉、佐藤和宏、佐藤一道、佐藤友子、さこう まさこ、佐野通夫、佐藤裕太、佐藤ユリカ (保育士 舞踏家)、椎野綾(社会福祉士)、志田 啓、篠田美津代、渋沢茂、清水さつき、下川雅嗣(上智大学教員)、申知瑛、菅本麻衣子、菅原佳祐、杉山 晶、鈴木敬治(障害者)、鈴木悟子、鈴木 さよ子、鈴木 力、鈴木まいら、関口悠樹、高井ゆと里、高井洋子、たかきすみこ(ふぇみん会員)、髙木靜一、髙橋 史帆、高村幸子、髙山健二郎、竹内 忍、竹田賢一、たけだまるみ(ゆじょんと)、田中 一昭、田中一彦、田中一弘、田中きよむ(こうちネットホップ代表)、田中紗智、田中ひかる、谷田あや子、田原陽子、ちゃんまり、池允学、土屋聡、鶴峰まや子、寺本香英、寺谷有香、土井宏紀、遠山日出也、徳岡輝信、中井公一郎、長尾有起、中川信明、中川祐希、中桐康介、長坂りえ、長澤 紀美子、中嶋絵美子、長島結、中島由美子(全国一般労働組合東京南部 執行委員長)、中西綾子、永野潤(非常勤講師)、中村順、中村 弥穂、中本れい、中森圭子(ふぇみん婦人民主クラブ)、なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)、名出真一、ナナシマ マリア、西川千花子、西村由美子、ninja taChanka、野上宏、のむらともゆき@反天皇制運動、BARBARA DARLINg、橋口昌治、橋本恭子(日本社会事業大学非常勤講師)、畠山照子、花束書房(伊藤春奈)、林風作、原口剛(神戸大学教員)、原 宝(日本基督教団 上大岡教会 牧師)、原田麻由美、平昭将史、平川 美郁、平間尚子、福井貴絵子、福田和子、福田美智子、福田ゆき、藤井千賀子、藤井光(アーティスト)、藤尾 哲也、藤本なほ子、藤原朋弘(弁護士)、フリーランス、 星野智幸、ほしのめぐみ、細井耕平、堀江里美(翻訳家)、堀川優奈、前川浩子(府中市議会議員)、前田朱里、まえだけいこ(福岡地区合同労働組合 組合員)、前田良彦、牧野美登里、増田幸枝、桝山剛宏、又川 秀喜、松浦まみ、松尾拓、松田尚之、松本潤子、松本真紀子、まや、三澤恵子、南出吉祥、皆本夏樹、峰わかば、宮﨑 一、宮野吉史、村上亜由美、村上らっぱ(府中萬歩記)、村田浩司(編集者)、村山貴史、森永 雅世、森 宏徳、山川宗則、山川幸生、山崎たつお、山﨑洋、山崎ひろみ、山崎正之(無職)、やまだ おさむ、やまもとゆきこ、山森亮、やんそる、横田都志子、横山 AiAi寛子、吉川好、吉田千尋、吉田尚史、吉田美奈子、よねざわいずみ(ソフトウェアエンジニア・「トランスジェンダリズム宣言」編著者)、米津 圭人 (出版情報関連ユニオン 特別執行委員)、米山功治、よるむ、李杏理、若林 宣(フリーライター)、若松 秀幸、渡辺一枝
以上256名。他に非公開402名を加え、合計658名。