2022年11月8日火曜日

渋谷区が10月28日に発表した公報に反論する

渋谷区は10月25日につづき、28日にも美竹公園などの封鎖に関する公報(注1)を発出した。同じテーマについて短期間に3回も公報を出すのは異例のことだ。社会的な注目が集まり、渋谷区が焦って誤魔化そうとしていることが伝わってくる。しかし、事実は事実であり、渋谷区が非道であったことに変わりはない。

渋谷区は、25日公報ではシェルターに3名を「案内」したと記すのみであったが、28日公報は2名が福祉施策を受けた(つまり1名は受けなかった)ことを書いている。25日公報では、公園内に1名しかいないように読めたが、28日公報では4名が起居していると書いている。多少事実に近づいたようだが、早朝に仕事に出かけた(もちろん声がけなど出来るはずがない)2名の野宿者がいたことなど、区にとって伏せたい重大な事実には触れようとしていない。

渋谷区は10月25日、旧第二美竹分庁舎も閉鎖したが、その理由をワクチン接種会場が終了したこと及び防犯上の観点としか記していない。しかし、旧第二美竹分庁舎は、美竹公園同様、〈渋谷一丁目共同開発〉の事業敷地であり、本質的な閉鎖理由はそこにある。旧第二美竹分庁舎はプレハブでなく本建築であり、開発計画がなければ、まだまだ利用可能なはずだ。
大きなピロティを持つ同庁舎は野宿者にとって雨雪がしのげる数少ない場所でもあり、2017年宮下公園閉鎖・強制排除からの様々な経緯の中で、ねる会議の毛布倉庫などが置いてあった。また、(隣接する児童会館跡地に建てられた)第二仮庁舎のスロープ下から排除された野宿者の小屋もあった。
渋谷区は、10月25日、旧第二美竹分庁舎閉鎖時に、所有者を確知していたにもかかわらず、それらの倉庫・小屋を予告なく一方的に撤去した。現在、それらの物品がどこにあるのかも明らかにされていない。
25日・28日公報において、この撤去について一切触れていない。

美竹公園の仮囲い(封鎖)は準備工事のためのもの、公園にいる人に対して「丁寧なお声がけ」をした、などの渋谷区の空文句については、すでに批判した(注2)。

続いての「路上生活者に対する誹謗中傷は、断じて許されるべきことではありませんし、このたびの公園の利用禁止は、公園内にいる方々を排除することを目的としたものではございません」との文言については、渋谷区の驚くべき厚顔さを再認するために取り上げたい。
路上生活者への誹謗中傷を禁止すると言う同じ口が、どういう開閉具合をしたら、それらの人たちが生活する場所を一方的に封鎖し、恐怖を与え、自尊心を破壊しようとし、一連の封鎖作業に対する野宿者の切実な問いに対して黙殺ができたのか?
わたしたちには全く理解ができない。公園にいる方々の排除を目的にしないという言葉に至っては、当事者にとって明らかな事実(=強制的な排除)の公然たる否認という、さらなる暴力の行使だ。

続いて「路上生活者の社会復帰を目的とするのではなく、公共スペースに起居させることを目的として活動している団体」なるものが出てくる。きっと、わたしたち、ねる会議のことだろう。社会〈復帰〉。わたしたちが、情報を交換し、支え合い、支援や炊き出しと結びつき築いている、生きるためのネットワークを、渋谷区は社会ではないと言うのだろうか? 
わたしたちは、公共スペースは貧しい者のためにこそあると確信している。そして、福祉の利用は、わたしたちの権利としてある。そのため、福祉事務所への同行支援も、福祉サービス改善の申し入れも行っている。福祉をとった仲間とも、わたしたちはつながりがあるし、つながりたいと考えている。
28日公報では、この団体(わたしたち)は一方的な要求を繰り返し、歩み寄っていただくことができず、建設的な話し合いには至っていない、と記している。10月25日のような乱暴なことを繰り返してきたのは渋谷区である。歩み寄りというのは、人権侵害を黙って耐え忍ぶことなのだろうか? 話し合いをないがしろにしているのは渋谷区である。

「10月28日に福祉的支援を申し入れる内容の手紙を改めて持参し」「2名に手紙をお渡しいたしました」とある。25日みたいなことをやった渋谷区を信用できません、と野宿者の1人は受け取りを断っているが、そのことは記していない。福祉事務所は、野宿者にとって、もっとも身近な役所窓口であるが、野宿者排除を防止しようとせず結果的に加担したことによって、その信頼が台無しになったことを自覚すべきだ。渡された〈手紙〉は「急に寒さが厳しくなってまいりましたが、お変わりありませんでしょうか」との時候の挨拶から始まる。10月25日の暴挙のあとで、お変わりありませんでしょうか、もないだろう。そもそも、寒い冬においてテントは身を守るシェルターであり、公園を追い出された時、一時的な福祉から外に出た時、格別に必要なものだ。それを奪おうとしたのは渋谷区ではないか。

ハウジングファースト事業の実績を詳記しているが、渋谷区の同事業は6床しかなく、現在、空き室はあまりないはずだ。アパート暮らしではあるが、原則3ヶ月で、現物支給のみの事業である。同事業は当初、対象を65才以上、路上と福祉を往還している者としており、福祉事務所の窓口では、そのように対象者を限定している。しかし、開発計画などがある場所では、福祉事務所は無限定に同事業を適用している。つまり、野宿者排除の受け皿としての事業となっている。渋谷区の行いは、ハウジングファーストの理念と隔絶している。

渋谷区は、印象操作が巧みなようだ。
しかし、わたしたちはこの街で生きている。消えてなくなりはしない。
2度と追い出すな。

2022年11月8日 ねる会議

注1 旧第二美竹分庁舎の閉鎖および美竹公園利用禁止に伴う仮囲いの設置について(これまでの経緯)
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kankyo/machi/shibuya_eki/stepuppj_keii.html

注2 渋谷区の美竹公園などの封鎖に関する公報を批判する
http://minnanokouenn.blogspot.com/2022/10/blog-post_28.html

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