2022年12月2日金曜日

【声明第二弾】  わたしたちは共に居るー 美竹公園の仲間を追い込む渋谷区に対して強く抗議し、代替地を要求する。(これまでの経緯とこれから)

 渋谷区は、野宿者を追い出すための計画を水面下で進めていた。強制封鎖に先駆けて、美竹公園周辺でいくつか変化があったのだ。「除却勧告書」(10月12日)が美竹公園の各テントに貼られる数日前、雨の凌げる高架下にはプランターが隙間なく敷き詰められていた。また、10月11日、美竹公園近くの神宮通公園南側は、24時間開放から夜間閉鎖に変更された。
 渋谷区は、まず、野宿者たちが他の場所に移動できないように逃げ場所を塞いだ。

※美竹通りJR高架下の歩道
※神宮通公園の夜間施錠についての貼り紙

 

 そして、10月25日、突然の強制封鎖が行われた。

 早朝6時半、渋谷区職員が美竹公園に大挙して現れ、何の説明もなく封鎖作業を行い、1時間後、今度は福祉事務所の職員がやってきた。美竹公園にいた野宿者のひとりは「身の危険を感じ、福祉を断れない状況だった」と語っている。追い出しのために仕掛けたこの「福祉的アプローチ」は、渋谷区が自らの福祉業務を貶めるようなものだろう。

※10月25日 封鎖された園内で「福祉の案内」をする渋谷区職員たちに囲われている野宿者と、シートで目隠しをされたフェンス越しから様子をうかがう仲間たち

 今回行われた「福祉的アプローチ」は、ハウジングファースト事業や東京都の自立支援制度を利用したものであった。これらは原則3、4ヶ月間で終了するため、その期間中に安定した仕事を見つけるか、終了後に生活保護を受けるか、だ。それらができなければ再度、路上に出ることになるだろう。通常、野宿者が生活保護を受給する際に紹介される無料低額宿泊所は渋谷区内にはなく、他の区域へいくことになる。そこは厳しいルールがあったり劣悪な部屋であったり、また、個室だとしても、埼玉、千葉、群馬、茨城など遠く離れていることが多い。それでも福祉を受けて部屋に入った人たちはこれまでたくさんいるが、数週間、数ヶ月後にまた路上に出る人たちも少なくない。

 現在も「利用禁止」とされた美竹公園に福祉課職員が訪れ、追い出しのための「お声かけ」は続いている。これは野宿者にとって大変なストレスとなっている。美竹公園に住む野宿者が福祉サービスを必要とする場合は、自ら福祉窓口にいくだろう。本人の意思を無視して福祉へ誘導することは追い出しに他ならない。

 誰もがそうであるように野宿者にとっても、生活の営みが突然壊され、他の生活を強いられるということは侵害だ。
 わたしたち野宿者たちは、食べるために働き、仲間同士で見守り・助け合うなど繋がりの中で生きている。脆弱なこの暮らしはわたしたちだけではどうしようもない時もあり、支援が必要になることもあるが、この格差社会で貧困状態にあることは、わたしたち貧困者の責任ではなく政治や行政の怠慢だ。福祉制度だけでは貧困問題は解決しない。家賃の高騰、労働の悪環境、家族単位での保障制度、企業利益を軸にした都市開発などがもたらす問題は、コロナ禍と物価高騰によりますます深刻化し、貧困者に負担を負わせることになっている。
 わたしたち野宿者は生きる権利を取り戻すための唯一の手段として自ら寝場所を作り、ささやかな生活を営んでいる。それぞれの営みには尊厳があり、テント村の存在自体は悪でも恥でもない。

 これまで渋谷区が強行してきた野宿者排除の背景には、公共空間を金儲けの場所に変えていく都市開発が、それぞれ存在した。2010年宮下公園の行政代執行におけるナイキパーク計画、2012年美竹公園の行政代執行におけるヒカリエなど駅周辺開発、2017年宮下公園の強制排除におけるオリンピックに向けた三井不動産の複合商業施設建設。2019年渋谷区仮庁舎(東京都児童会館跡地)スロープ下の強制封鎖と荷物撤去は、今回の美竹公園と同様、渋谷区一丁目地区共同開発のためである。

 美竹公園閉鎖について渋谷区がホームページに三度目の声明を公表した中に「また、25日には、路上生活者の社会復帰を目的とするのではなく、公共スペースに起居させることを目的として活動している団体が、警備の制止を振り切り、閉鎖した公園内に侵入しました」とある。

 「公共スペースに起居させることを目的として活動している」と、渋谷区は「団体」の名前を出さずに特定し独自の見解を述べている。これは、長谷部健区長がこれまでメディアを含むさまざまな機会を使って「団体」について述べている内容と同じであり、野宿者排除の批判を逸すために、野宿者支援「団体」へ敵意を向けていることは明らかだ。加えて顕著なことは、「公共スペース」を企業経営の場に改変する渋谷区は、貧困者が生活を自ら補なうことに対する公共的な観点を持つことができず、野宿者を社会の枠から排除していることだ。

わたしたちは、野宿者を排除することに抵抗し、生活破壊に追い込む渋谷区に対して抗議し、代替地を要求する。

 念のために記しておく。「ねる会議」は様々な野宿者たちが参加しているが、共通している目的は、野宿者たちが自分のことを自分で決め、自分らしく生きる権利を奪われないようにすることだ。よって「起居させること」と、まるで野宿者がそこに居ることに主体性がないような渋谷区のなめ腐った眼差しを、わたしたちは強く非難する。

 更に、25日公園封鎖された際、園内に留まっていた無抵抗の一人の野宿者と公園外とのやりとりを複数の警備員が囲んで妨害したり、また、渋谷区職員がトイレを閉鎖し、水道を閉鎖・損壊するなど、人権侵害が行われていたため、抗議者たちが公園内に入ることで事態の打開に踏み切ったということも書き添える。

※10月25日正午前、目隠しするためにゲートにシートをつける渋谷区職員たち

※園内のトイレが封鎖され、水道の蛇口が破壊されている状況(撮影 10月25日朝の封鎖から12時間後)

※Link Park渋谷一丁目地区共同開発事業【完成予想図】より

 美竹公園の再整備を含む渋谷一丁目地区共同開発事業計画は、居住やオフィスなどの複合施設が建設される予定だ。ヒューリックと清水建設のJVであるLinkParkの計画図によると、美竹公園はまるで複合施設の庭のように配置され、ますます利用目的が限定される公園へと変容するようだ。広報で「多様性」という言葉を強調して連呼しても、野宿者を追い出す渋谷区には多様性を実現できない。渋谷区が作成した「美竹公園整備に関する条件書」は「ベンチは寝そべられないようデザインに配慮してください」と、事業者へ排除ベンチを指示しているありさまだ。

 差別を剥き出しに立案される「まちづくり」が展開される渋谷区内で、野宿者への襲撃が多発している。
 2020年、幡ヶ谷のバス停で寝ていた女性野宿者が、清掃ボランティアをしていた住民に撲殺された。2018年と2022年、スポーツNPO団体の理事でもある渋谷区住人が、近隣の野宿者の寝場所や荷物を狙った連続放火もあった。
 これらの事件は氷山の一角であり、この「まち」では頻繁に野宿者襲撃が起こっている。渋谷区政の野宿者への振る舞いが地域住民たちに大きく影響しているのではないか?

 渋谷区は野宿者排除をやめろ。
 美竹公園の野宿者たちはフェンスに囲まれ生活することになり、精神的に追い込まれ苦しい状況に置かれている。
 わたしたちは共に居る。
 野宿者を誰一人追い出すな。
 美竹公園の行政代執行の手続きを中止しろ。
 地域の中でわたしたち野宿者は生きている。

※11月2日、「野宿者排除を許さない」とプラカードを掲げ渋谷区役所へ向かう人々

2022.12.1 ねる会議





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