2020年8月8日土曜日

野宿者給付金行動で、男性の相談窓口がないことが発覚! ~渋谷区またもやダイバーシティのうそ

住民基本台帳を基準とした定額給付金は、住民票がない多くの野宿者たちへ届いていません。一方、総務省は、世帯主である配偶者や親族の暴力から避難している人には、避難先での住民登録がなくても、居所の自治体で、被害の「確認書」を申請し、世帯主に居所を知られずに給付を受け取れる特例措置を設けています。これは、児童虐待やDVの被害者支援の運動の成果でしょう。ところが先日、この対象となる野宿者が、渋谷区で「確認書」の発行を断られたという事が起こりました。
ある野宿者が「確認書」を発行してもらおうと、6月中旬、ねる会議メンバーのひとりと渋谷区福祉窓口を訪れました。しかし、DV被害相談は女性と子どもに限っており、そのため男性には「確認書」を発行できないと言われました。耳を疑うような返答でした。相談は女性・子どもだけと限定していること、それ以外の人たちはどこで確認書を発行しているのかも伝えられないということに、唖然としました。
ダイバーシティを謳う渋谷区が、特定の性別の相談を断っているという…。当該の方は「この(避難者のための)やり方、女の人だけなんだぁ。」と、うつむいてしょんぼりしていました。
すぐにねる会議のメンバーたちは、渋谷区が男性の「確認書」を発行するのはどこなのか協議するよう、給付金課と福祉課に申し入れました。
そして渋谷区からは、男性の「確認書」は、東京都ウィメンズプラザの男性相談で発行すると連絡がありました。確かに、東京都ウィメンズプラザは渋谷区にあります。しかしなぜ? 渋谷区には所管のダイバーシティセンター・アイリスがあるのに、そこでも男性の相談を受け付けていないのか? まったく謎でしたが、その時は、当該の方になるべく負担がかからないように、とにかく給付金の手続きが進むようにと、ウィメンズプラザの男性相談に連絡してみようということになりました。ねる会議のメンバーが、予約方法など調べてみるとウィメンズの男性面談相談は、週一回一時間だけでした。慌てて当該の方はねる会議のメンバーと電話しました。しかし、男性相談は8月下旬まで予約がいっぱいとのこと。それでは期限に間に合わない! 電話口では「渋谷区さんに確認書を発行してもらうように言ってください」と伝えられました。当該の方と、メンバーはすぐに渋谷区福祉事務所へ向かい、ほんとうにウィメンズプラザと連携して決めているのか?予約でいっぱいってことですよと、窓口にうなだれて訴えました。すると、すぐに確認します、と相談係長。そして、とうとう尋ねました。「ダイバーシティセンター・アイリスではやってないんですか?」すると、「アイリスにはそのような体制はないんです」ということでした。
閉口。
その日は福祉事務所を後にしました。
渋谷区は、こんな体制でダイバーシティを掲げていたのか?
そして、あちらこちらとたらい回しにされ、給付金担当課長が謝罪し、結局、「確認書」は給付金担当窓口で受け付けられることになりました。専門の相談員との面談で手続きが行われないことは不安ですが、ひとまずこの当該者へ「確認書」は発行され、給付金が給付されるに至りました。
 
渋谷区には男性相談窓口がない。このことからは、被害相談が必要な人を、女性や子どもと限定し、渋谷区が、暴力や、暴力の連鎖を防止しようと考えていないことが明らかです。閉ざされた家族関係の中では、同性のパートナー間、成人している子から高齢の親へ、兄弟姉妹、親族間で、さまざまな暴力が起こりうるでしょう。
路上や公園に留まる野宿者たちは、家族と連絡を取りたくない為に生活保護の受給ができないと考える人も少なくありません。保護申請の審査には親族照会があるためです。連絡が取れない理由は様々でしょうが、中には、親からの暴力を受け続けて育ち、家族中が暴力的な関係となってしまっていることもあります。成人した自分が高齢の親を殴りそうになるところから家を出て来た人たちもいます。
家庭内での男性被害を無いことにする、もしくは、それぐらいたいしたことではないと矮小化することは家父長制への執着からかもしれません。
 今回の事態を受けて、ねる会議は4団体と共に、渋谷区へ苦情申し立てを行いました。回答が来たらまた報告します。


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